【日本の横笛の種類/特徴②】篠笛(古典調/唄物/ドレミ調)みさと笛
「篠笛」とひと言でいっても、実際には様々な種類があります。
例えば、音程でいえば「古典調」「唄物(唄用)」「ドレミ調」がありますし、音階でいえば「八本調子」「七本調子」「六本調子」など、いろいろな種類があります。
「篠笛が欲しい」「篠笛を吹きたい」と思っても、実際に「どの篠笛を購入すればいいのか?」よくわからなくなり、困ってしまう人も少なくありません。
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そこで今回は、篠笛の特徴や種類についてポイントをまとめてみたいと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
篠笛の特徴(指穴の数・音程・音階)
篠笛は、古くから日本各地にある横笛です。現在でも、全国各地の屋台囃子や盆踊り、民謡などの民俗芸能で使われています。
篠笛の材料となる材質は女竹(めだけ)で、孔(穴)を開けただけのとてもシンプルな構造になっています。
指孔(穴)の数は、一般的には六孔、七孔の篠笛が多いですが、地域によっては指穴が少なめの五孔や四孔などの篠笛もあり、使用される地域や用途によって様々な音色や音階、旋律を奏でることができ、幅広い表現が可能な横笛です。
篠笛の代表的な特徴としては、「ピーーーーッ」という艶があってまっすぐな音色、指打ちによる「ピロピロ〜♫」「ぴーひゃら♪ぴーひゃら♪」などの装飾音があります。
材料となるのが篠竹(細い竹の総称)なので、「篠笛」と呼ばれるのが一般的ですが、地域によっては「笛」「草笛」「笹笛」と呼ばれることもあります。
古典調・お囃子用【篠笛の種類】
日本では全国各地にその地方特有の民族芸能(歌舞伎・お囃子・祭り囃子・盆踊り・民謡など)が古くからあります。
篠笛の素材となる竹の内径・外径、指孔の数と孔(穴)の数が同じであれば、同じ音階&音程の笛になります。
現代の私たちが学校教育を通して慣れ親しんでいる西洋音楽の「ドレミファソラシド」の音階とは違い、日本各地の伝統芸能や民俗芸能では、古くからその地域ごとの音階が伝承されてきています。
そのため、その地域ごと、地方ごとの音階の篠笛も数多くあり、それらの総称として「古典調の篠笛」と呼びます。「古典調」の篠笛の音階は独特で、当然ですが西洋音楽のドレミファソラシドとは合いません。
古典調の篠笛の場合、指孔の感覚は押さえやすいように、ほぼ等間隔になっていることが多いようです。笛の演奏者自身が制作することもありますが、笛師(ふえし)と呼ばれる篠笛の製作者がつくった「お囃子用の篠笛」も数多く流通しているようです。
唄物/唄用【篠笛の種類】
古典調の篠笛に対して、指孔(穴)の位置と大きさを工夫し、歌舞伎囃子の三味線の音階に合うように改造(改良)されたのが「唄用/唄物の篠笛」です。
唄用/唄物の篠笛は、主に歌舞伎や上方舞、民謡などの場面で使われています。
唄物/唄用の篠笛の指孔(穴)は七孔で、音階は1本調子から13本調子まであり、それぞれ音程・音域が変わります。太くて長い篠笛は低い音、細くて短い笛は高い音が出ます。つまり、一番低いのは一本調子、高いのは十三本調子ということですね。
唄用/唄物の篠笛にはそれぞれ管頭部分に数字が記入されていて、数字が小さい方が低い音階、数字が大きい方が高い音と、半音ずつ変わっていきます。
「唄物/唄用」の篠笛が誕生したのは昭和初期といわれています。それまでは、長唄などでも古典調の篠笛が吹かれていたのですが、三味線の音に正確に合わせるには「メリ・カリ・運指」などの奏者の工夫や奏法を駆使する必要があり、難しかったようです。
そうした背景の中、五世から六世の福原百之助(ふくはらひゃくのすけ)によって改造・改良され「唄用/唄物」の篠笛が作られたという歴史があります。
初心者が篠笛を購入する際の注意点
初心者の人が、篠笛を購入する際に気をつけたい注意点があります。
龍笛・能管などの調律等の規格が決まっている横笛は、実店舗、ネット通販の楽器店で自分が欲しい横笛も合っている物を購入することができます。
ですが、篠笛の場合は、地方・地域、用途、音階・音程、指孔の数など、様々な種類があり、人によって「篠笛」からイメージする物にも違いがあります。
少し極端な言い方をすれば「龍笛」「高麗笛」「神楽笛」「能管」「明笛」「清笛」以外の、日本の横笛はすべて「篠笛」と呼ばれているのです。
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そのため、「この音程で、こういう用途で演奏する篠笛が欲しい」と思っているものに、ちゃんと合っている篠笛を選ぶ必要があるので注意してください。
唄用の篠笛の方が古典調より優れている?
音階/音程が調律されている唄用/唄物の篠笛の方が、調律されていない古典調の篠笛よりも優れているってこと?と考える人も少なからずいるようです。
しかし、決して「古典調が劣っている」「古典調の音がくるっている」ということではないので思いちがいをしないでくださいね。
例えば、だんじりで有名な南大阪の岸和田市の「岸和田だんじり」のだんじり祭り囃子では、笛師が製作する「七本調子 六孔 古典調」の篠笛が吹かれています。
岸和田といえば「だんじり中心」の生活をする、ということでも有名ですね。「その日はだんじりの日なので仕事を休みます」というのが岸和田出身の人のごくごく普通の感覚だ、とか、年間カレンダーは1月始まりや4月始まりではなく「だんじり」にあわせて一年間のカレンダーがつくられるとか、いろいろと有名な逸話があるくらい「だんじり」中心の町です。
その「岸和田だんじり」の人々は、古くからずっと「七本調子 六孔 古典調」のだんじり囃子の音階・音程に慣れ親しんできているわけです。ですので、彼らの耳からすると、「唄用/唄物」の篠笛の方が「音がずれている」と感じることになりますね。
また、三味線の入る盆踊りの場合、「古典調の篠笛」の音程/音階だと三味線の音とずれてしまい、「唄物/唄用の篠笛」で演奏すると三味線の音程と合わせることができます。しかし、昔から古典調の篠笛と三味線の音に慣れ親しんでいる地元の人からすれば、三味線の音程と合っている「唄物/唄用の篠笛」の方が違和感を抱く、ということになってしまいます。
このように「唄物/唄用の篠笛」は音程が調律されているから「古典調の篠笛」よりも優れているというわけではありません。「古典調の篠笛」の特性や歴史的背景などを理解し、演奏する状況に合わせることが大切なのです。
ドレミ調の篠笛・みさと笛
現在の日本の学校教育、音楽教育では、西洋音楽のドレミファソラシドの音階を基本として学習することになっています。
今、このサイトを読んでいるあなたも(書いている私も含め)、ピアノの調律などで使われる十二平均律の「ドレミファソラシド」が基準音階として感じる人が大多数だと思います。
そのため、十二平均律(ドレミファソラシド)の西洋音階に慣れている耳だと、古典調や唄物の篠笛の音階は「音がずれている」「音階・音程が変orおかしい」と感じてしまうものです。
そこで、現代音楽として、日本の伝統楽器を西洋音楽の音階に合わせることを目的として「ドレミ調の篠笛」や「みさと笛」と呼ばれる笛が誕生しました。
「ドレミ調の篠笛」は、西洋音階の十二平均律に合わせて、篠笛の音程・音階をあわせるために、篠笛の指孔(穴)の位置、穴の大きさを改造・改良されています。
「みさと笛」は、さらに裏孔(穴)を追加して改造/改良されています。
ピアノや西洋管楽器とあわせて演奏することを目的にするのであれば、十二平均律で調律して製作された「ドレミ調の篠笛」を購入することをおすすめします。
「何本調子」については長くなりそうなので、また別の記事で詳しくは説明したいと思いますが、「ドレミ調の八本調子」が西洋音楽の「ドレミファソラシド」の音階・音程に合っている篠笛になるので、比較的人気がありますね。
篠笛は五線譜で表せる?表せない?
日本の伝統音楽(伝統芸能・雅楽・歌舞伎・お囃子・民謡・夏祭りなど)は、それぞれ各地での基準や音色、旋律、拍子が独特だったり、地元の方の強いこだわりがあったりするものです。
しかし、日本音楽は歴史的にみても、拍子や旋律(メロディ)を表記する方法が統一されていないのが現状です。その多くは「口伝(くでん)」で、つまり人から人へ、言葉で伝承されてきているものも多くあります。
それに対し、西洋音楽の五線譜(、いわゆるおたまじゃくしの楽譜ですね)は、今日では音楽会では世界的な標準語、もしくは共通言語のようなものとして位置付けられています。そのため、地域、言語、国、流派などの境界を超えた相互理解を可能にしてくれるメリットがあります。
そのため、統一された表記法が存在しない日本の伝統音楽を後世に伝え、また世界中の人々に広げていく際に、五線譜を使って表すことは大変意義があり、便利な表記法といえます。
とはいえ、五線譜で日本の伝統音楽のすべてを書き記すことができるわけではなく、五線譜では表しきれない微妙な、繊細な内容もあります。五線譜という便利なものも活用しながら、実際の音楽(例えば篠笛の旋律や音程など)を自分の耳で聞き入れ、受け入れる柔軟性も忘れないようにしたいものですね。
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