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脳が原因?遺伝するの?境界性パーソナリティ障害と前頭葉やセロトニンとの関係は?

境界性パーソナリティ障害の特徴的な症状といえば、激しい怒り、見捨てられ不安、自傷行為など、感情の不安定さ、情緒不安定さです。

感情や衝動をうまくコントロールできない理由には、脳のはたらきが関係しているともいわれています。

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そこで今回は、境界性パーソナリティ障害と脳の働き(前頭葉・セロトニン・扁桃体・視床下部や下垂体)の関係についてまとめてみたいと思います。

境界性パーソナリティ障害と脳のはたらき

境界性パーソナリティ障害にみられる様々な症状や特徴と、脳の部位とはたらきについて、いくつかわかってきていることがあります。

・前頭前皮質(前頭葉)の機能低下
・セロトニンと不安やうつ、衝動性の関係
・激しい怒りなどの感情と扁桃体
・ストレスと視床下部、下垂体の関係

それぞれについてもう少し詳しくみてみましょう。

前頭前皮質(前頭葉)の機能低下

前頭前皮質(前頭葉)は、行動のコントロール、考えたり話したり、合理的な判断と関係している脳の部位です。

ストレスによって前頭前皮質のはたらきが低下すると、感情や行動がうまくコントロールできなくなるといわれています。

セロトニンと不安、うつ、衝動性の関係

脳内の神経伝達物質のひとつ、セロトニンの働きが低下すると、不安やうつ気分が強くなってしまいます。

そのため、セロトニンのはたらきを促す治療薬としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が、境界性パーソナリティ障害やうつ病の治療薬として処方されることがあります。

ストレスと視床下部・下垂体

境界性パーソナリティ障害の人は、ストレスに過剰反応しやすい傾向があります。

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ストレスに反応する脳の部位は、視床下部・下垂体のはたらきが関係しています。

些細なことで怒り出したり、落ち込んだりしてしまう人と、ストレスに強い人の違いも、視床下部・下垂体の反応の違いと考えられています。

その他の要因|境界性パーソナリティ障害と脳

・自傷行為をする人は、痛みの感覚の閾値が一般的な人よりも高い
・境界性パーソナリティ障害の人の中には、ADHDだった人が多いという調査報告もある
・過去に頭に怪我を負ったことがある人が境界性パーソナリティ障害になりやすいという説もある

境界性パーソナリティ障害は遺伝するのか?

脳の働きには、生まれつきの要因と生まれてからの環境要因の両方が関係しています。

こうした脳の働きが遺伝するかどうかについては、まだ研究段階です。

参考としてですが、境界性パーソナリティ障害の人の血縁関係を調べた海外の調査では、血縁者は境界性パーソナリティ障害の発症率が高い、という報告もあります。

また、うつ病や躁うつ病(双極性障害)、反社会性パーソナリティ障害、薬物依存の人が多い
というデータもあります。

感情や衝動と脳のはたらき

境界性パーソナリティ障害の人は、自分で感情や衝動をコントロールすることがうまくできません。

人間の感情は脳のはたらきと深い関係にあることがわかっており、境界性パーソナリティ障害などの精神疾患の発症と脳の部位、神経系の働きとの関係についても研究がすすめられています。

脳科学は進歩していますが、脳の構造は複雑で、まだわかっていないことも多くあります。

現時点でわかっていることがいくつかあるのですが、それだけで境界性パーソナリティ障害の原因は脳いある!と断言するのは難しいです。

ですが、脳の解明が進むにつれて、境界性パーソナリティ障害の激しい怒りなどの感情や衝動を抑える治療法が確立されつつあります。

◆この記事は、日本の医学者、精神科医。帝京大学医学部教授の林直樹先生執筆・監修「よくわかる境界性パーソナリティ障害(主婦の友社)」の内容を元に、心理カウンセラーが記事編集をしています。

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