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境界性パーソナリティ障害の治療経過と予後について、有病率は?

境界性パーソナリティ障害は、治療に比較的時間がかかりますが、病院できちんと治療を続けることで症状が回復する病気です。

今回は、境界性パーソナリティ障害の治療経過と予後、有病率について書いてみたいと思います。

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境界性パーソナリティ障害の有病率は?

境界性パーソナリティ障害の有病率は、人口の1〜2%の割合と言われています。

また、精神科の外来患者のうちでは約10%、精神科入院患者のなかでは約20%程度の割合とされいてます。

男性と女性の比率をみてみると、男女比「1:2」となっていて、女性の方が境界性パーソナリティ障害の有病率が高くなっており、年齢層では若い女性の方が高くなっているという調査結果があります。

若い年齢の方が症状が重い特徴がある

境界性パーソナリティ障害の患者さんの年齢分布をみてみると、有病率は年齢が下がるにつれて低下していくことがわかります。

境界性パーソナリティ障害の年齢による患者割合は、20代がもっとも多く、また症状も重症となっています。

30代以降では症状に改善がみられるようになり、その後も改善を続けるという自然経過をたどると考えられています。

境界性パーソナリティ障害は治療することで回復する病気

海外での調査報告においても、長期的な経過の中で、多くの患者さんが境界性パーソナリティ障害の診断基準に当てはまらなくなり、診断されなくなるという結果が報告されています。

特に、リストカットなどの自傷行為や、オーバードーズなどの薬物乱用等の衝動的行動、不安定な人間関係などの境界性パーソナリティ障害の特徴的な症状は、治療することで比較的早く改善されることが報告されています。

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また、孤独感や不安、怒りなどの不安定な感情、激しい感情などの症状は、なかなか変化しにくいと考えられています。

境界性パーソナリティ障害は、他の精神疾患との併合、合併が多い病気です。

中には境界性パーソナリティ障害の回復を妨げる病気もありますが、治療に取り組むことで早期改善、回復が見込まれます。

あせらずに長い目で治療に取り組む姿勢が大切です。

境界性パーソナリティ障害の治療経過と予後に関する研究報告

2002年、2003年のアメリカでの研究報告によると、外来患者が一年間治療した後にまだ境界性パーソナリティ障害と診断されていたのは41%となっていて、約半分の患者が改善しています。

また、入院患者のうち35%の患者さんは2年後には診断基準にを満たさなくなり、元入院患者のうち49%の人は4年後には診断基準を満たさなくなったことがわかっています。

境界性パーソナリティ障害の患者さんのうち、病院を通院している外来患者は1年後には診断基準を満たさなくなり、入院患者では6年間で約70%の人が境界性パーソナリティ障害と診断されなくなり、再発もなかったことが報告されています。

境界性パーソナリティ障害の治療をさまたげる病気

境界性パーソナリティ障害は、他の心の病気との合併、併発が多い病気です。

次のような病気は境界性パーソナリティ障害の回復の妨げとなりやすいので注意が必要です。

・アルコール依存症
・薬物依存症
・PTSD(心的外傷後ストレス障害)
・うつ病
・パニック障害
・他のパーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害の患者本人が病気の治療に積極的に取り組む姿勢は症状改善に大切です。

また、ストレスとなりやすい人間関係から距離を置くこと、治療に協力的な人間関係を築くことも病気の回復に良い影響を与えます。

◆この記事は、日本の医学者、精神科医。帝京大学医学部教授の林直樹先生執筆・監修「よくわかる境界性パーソナリティ障害(主婦の友社)」の内容を元に、心理カウンセラーが記事編集をしています。

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